185時限目 かな:「和漢朗詠集」と「巻子本古今集」について(記事版)

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185時限目 かな:「和漢朗詠集」と「巻子本古今集」について(記事版)

師範のつぶやき

2021/07/26 185時限目 かな:「和漢朗詠集」と「巻子本古今集」について(記事版)

本日も、こうして御来訪下さり、誠に有難う御座います(*^▽^*)

前回と今回では、「和漢朗詠集」と、かな書道に於ける他の古典の作品の比較を行おうと思います。

で、今回は、「和漢朗詠集」と「巻子本古今集」を比較して、何なら前回取り扱った「元永本古今集」と「巻子本古今集」も比較して、その三者の特長の違いなどについてお話しようと思います。

 

今回の記事や次回の記事、元ネタ動画を御覧になる事で、古典「和漢朗詠集」や「巻子本古今集」、追加するならば「元永本古今集」の特長も改めてつかめ、更にその特色の違いなどについても理解できるようになるだけではなく、その臨書作品を美しく書けたり、その臨書で得た技術を応用できたりするようになりますよ!!(*^-^*)

但し、当教室では、古典臨書について学ばれるのは高校生や成人の生徒さんで、小中学生の生徒さん達は古典臨書については学びません。その為、古典について予習をしたい中学生の生徒さんや、既に古典臨書について学ばれているものの、理解がし難い高校生以上の生徒さん向けのお話となります。ですので、小学生の生徒さんや未就学児(保育園児・幼稚園児)達は、別な記事を御覧になる事をお勧め致します<m(__)m>

 

てな訳で、早速本題に入っていきましょう。

しかし、「「和漢朗詠集とは何ぞや?」というお話や、「「元永本古今集」とは何ぞや?」というお話は、過去記事「かな:古典臨書「和漢朗詠集」(前編)」回や「後編」、「かな:臨書「元永本古今集」」回で語っているので、ここでは割愛致します。

しかし、「巻子本古今集」についてはこれまでの動画やブログ記事では語っていませんし、ここで「「巻子本古今集」とは何ぞや?」というお話だけはしてから、比較に入っていこうと思います(*^-^*)

「巻子本古今集」は、平安時代後期に「古今和歌集」を模写(臨書)してまとめられた古写本で、元ネタとなった「古今和歌集」が構成されている全20巻プラスかな序も加えた全21巻のうち、そのかな序だけが現代も尚、そのままの形で現存しています。

その他の巻子本も13巻ほど残ってはいましたが、時は流れ、安土桃山時代の茶の湯の流行と同時に、それらも巻子本から分割されてしまって、古筆切になってしまいました。

そして、その茶の席を華やかに飾るものとして使用されるようになりました(苦笑)

で、筆者は源俊頼かと言われていましたが、現代は藤原定実説が有力です。

 

 

では、早速それらの「和漢朗詠集」と「巻子本古今集」で全く同一の歌を臨書してみました下の画像を御覧になり、その違いや共通点などに御注目下さい。

 

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2枚の作品のうち、上が前回も活躍しました「和漢朗詠集」版で、下が「巻子本古今集」版です。

念の為再度申し上げますが、師範は全く同じ歌を臨書していますφ(..)

 

先ず、「和漢朗詠集」・「巻子本古今集」の両者とも、「本(ほ)」の変体がなや「ゝゝと」は書きぶりこそ異なりますものの、字自体は同じです。

しかし、「和漢朗詠集」では変体がなの「能(の)」を用いていますが、「巻子本古今集」はひらがなの「の」という違いもあります。

更に、「和漢朗詠集」の方では、何なら「元永本古今集」も「あ可(か)し」はひらがなプラス変体がなの構成ですが、「巻子本古今集」では「明石」と漢字表記です。

 

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また、「あさ支(き)利(り)尓(に)」は、ひらがなと変体がなを巧く使って表現している方が「和漢朗詠集」です。

しかし、「元永本古今集」や「巻子本古今集」は、「朝霧尓(に)」と、漢字を用いていて、しかも行書体を巧く調和させています。

また、その漢字の書きぶりも、「元永本古今集」の方はどちらか申しますと楷書っぽい行書ですが、「巻子本古今集」は少し草書チックです。

 

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更に、変体がなの「尓(に)」も、三者で書きぶりがそれぞれ異なります。

 

その後の「しま可(か)くれ~」も、「和漢朗詠集」は漢字を用いず、ひらがなと変体がなで表現しているのに対し、「元永本古今集」や「巻子本古今集」では、「嶋」という漢字や、「行」の草書体を用い、これまた巧く調和させています。

更に、その「嶋」という漢字も、「元永本古今集」では「鳥」というつくり部分が楷書っぽい行書なのに対し、「巻子本古今集」では草書っぽい「鳥」です。

 

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それから、「ふね」という部分も、「和漢朗詠集」はひらがなですが、「元永本古今集」や「巻子本古今集」だと「舟」という漢字を巧く用いています。

勿論、「舟」という字も、「元永本古今集」の場合は楷書っぽい字形の行書ですが、「巻子本古今集」の場合は2画目のはらいが略された、草書っぽい「舟」です。

 

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更に、「巻子本古今集」だと「思」も感じですが、その書きぶりも「元永本古今集」とは異なります。

それに対し、「和漢朗詠集」の場合は、その「お无(も)ふ」もひらがなプラス変体がなです。

尚、この変体がなの「无(も)」も、過去記事「かな:古典臨書「和漢朗詠集」(前編)」回で詳細に取り扱っています。

 

ところで、前回取り挙げた「元永本古今集」の方は「ほのゝゝと」の「ほ」がひらがなで、「あ可(か)しの」で改行しているのに対し、「巻子本古今集」の方は「和漢朗詠集」のように、「本(ほ)のゝゝと」から「明石のうらの」まで、1行として続けています。

 

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逆に(?)、「行」という漢字はどちらも草書体で、作品に良く馴染んでいます(笑)

 

このように、同じ歌であっても、古典(書いた人)が異なれば、このような違いが出てきます(書いた人が違うので当たり前ですが)

殊に、かな書道の場合は、漢字とひらがなの変換や変体がなの使用、草書体っぽい漢字の使用、それから連綿させる場所を変更してみたり、構成の変更(余白の空け方の工夫)などなど、御自身の創意工夫の自由度も高いです。

このような違いを鑑賞で対比して味わったり、連綿の場所や漢字とかなの変換などを参考に、御自身でオリジナル作品を書かれる場合の一助とされたりしてみては如何でしょうか?

 

 

しかし、今回あげた書き方はあくまでも「ほんの一例」ですので、妄信せず、時と場合によって使い分ける事です( `ー´)ノ

その為にも、臨書(古典作品を模写して学ぶ事)や運筆練習を精力的に励まれる事が第一です。

因みに、今回の記事の元ネタ動画は、コチラから御覧下さいませ。↓↓

 

 

但し、概要欄でも御話ししている通り、過去に演劇をやっていたとは思えない程、師範の解説がかみっかみで非常に恐縮です(一一”)

 

それでも、元ネタ動画の方も、皆様のお役に立てましたら、高評価・チャンネル登録・コメントなども頂ければ、師範は非常に嬉しく思います(T_T)

 

 

そして、今回も最後まで御覧頂きまして、誠に有難う御座いました<m(__)m>

 

 

 

 

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